第5回現空研空手道大会感想 無差別級準決勝 その一

2012/05/08


平成24年5月5日第5回現空研空手道大会が開催された。

無差別級は例年同様とても厳しい内容であったが過去に例のない結果を残した。

 

無差別級トーナメントは大きく4ブロックに分けられ、前回優勝の二戸(兄)三段と前々回優勝の内田初段を両端に据え、途中この二人の対戦が無いように配された。

また各ブロックに二段以上が二名均等に配され、過去の実績と現在の調子から優勝に絡む可能性の大きい者四名が4つのブロックにそれぞれ分散された。

 

その四名はAブロックに二戸(兄)三段、Bブロックに加藤三段、Cブロックに園田(剛(二段)、Dブロックに内田初段というものである。

内田初段だけ二段以上ではないが、彼は今年二段昇段の推薦う受けており、夏の合宿で15人組手が予定されているし、無差別級優勝の実績があるのでここに配された。

 

日辻初段はAブロックに配された。

彼の初戦は壮年部軽中量級の優勝者遠藤二段との対戦である。

 

二人はともに今年度二段昇段の推薦を受け遠藤二段は先月15人組手を完遂させ二段を取得したばかりである。

現在技術、気力ともに充実した二人の対戦となった。

 

今回二人はそれぞれ一般部の軽中量級と壮年部の軽中量級にエントリーしたのだが、本来は日辻初段は軽量級、遠藤二段は重量級に近く、15人組手に備えての走りこみなどで中量級に減量した結果の軽中量級である。

 

この対戦は互いの技が拮抗する中での接戦となったのだが、今改めて振り返ると日辻初段の組手にこの後の二戸(兄)三段との組手を占う技術的な片鱗をうかがうことができる。

 

それは開始直後に見せた下の写真で分かる上段前蹴である。

この時は、やや浅く主審も副審も取らなかったのだが、紙一重であった事は確かであった。

 

結局この対戦は引き分けの末延長戦での旗判定となるのだが、上段突有効の1ポイン差が判定に大きく影響し、副審の旗も割れずに勝利したのが日辻初段であった。

 

左 日辻初段の上段前蹴 右 遠藤二段

 

そして日辻初段は準決勝で無差別級で連覇を狙う二戸(兄)三段と対戦したのである。

実績を踏まえれば、誰しもが二戸(兄)三段の勝利を疑っていなかっただろう。

 

というのも、今回は剛柔流から加藤三段という現空研大会の上位常連の強豪が参加しており、友好関係のフルコン他流派の強豪にも参加招待していて、それらの強豪と二戸(兄)三段の対戦が必ずあると予想していて、そちらに関心が向かい気味だったからだ。

 

二戸(兄)三段は稽古、研究共に熱心でその技術はまだまだ向上を続けている。

しかし上手の手から水が漏れるの例えもあるように、過去にもちょっとした油断で不覚をとったこともある。

 

だから当日参加も含めてどんな相手と対戦することになっても「平常心」で戦って欲しいと思っていたし実際彼にも伝えた。

彼もそのことは重々承知していたようである。

 

しかし、勝負というものはやってみなくては分からないものである。

結果は僅差で日辻初段の勝利となった。

 

日辻初段の勝利を決定づけたのは開始数秒のいきなりの上段前蹴であった。

柔らかな体を生かしたモーションのないいきなりの前蹴が見事に決まった。

 

副審二人と主審が一斉に技有をコールする完璧なものだ。

この蹴りが先の遠藤二段との対戦でも出していた前蹴なのだ。

 

決して偶然のものではない。

今回この場面で意図したのか体が無意識に反応したのかは本人に聞いてみないと分からないが、彼の必殺技が炸裂したのだ。

 

これで二戸(兄)三段の歯車が狂った。

平静になろうとしているのは分かるが、行動にはあきらかなあせりが見えてしまう。

 

まだ開始早々で二分も残っているのである。

彼の実力からすればそれは挽回するに十二分な時間である。

 

彼の攻め一辺倒になった動きを冷静に受け止め的確なカウンターを決めたのは日辻初段の方だった。

きれいな上段突で有効を取り圧倒的な優勢で終盤を迎えた。

 

しかしここで二戸(兄)三段も意地をみせる。

圧倒的なパワーで相手を押し込み得意の上段回蹴を放つ。

 

ガードの上のようだったが副審の一人が技有のコールをする。

主審は「止め」を命じ、副審二人を呼んで協議に入った。

 

しばしの協議の後、主審は二戸(兄)三段の技有を宣する。

しかし二戸(兄)三段の反撃はここまでだった。

 

主審が今回のルールを勘違いして延長を宣したが、事前に説明したとおり本戦で互いに技有を取っての有効差はこれを判定基準にするというルールを適用して日辻初段の勝ちとした。

 

内容としては僅差であり、主審や副審も大変難しい判定で、どちらにころんでもおかしくないくらいの内容ではあった。

また、細かいルールを熟知していなかったため、二戸(兄)三段は最後の残り時間を有効に使っていなかったかもしれない。

 

それでも、今回のこの勝負は二戸(兄)三段の潜在能力を考えると彼をあわてさせ、これを制した日辻初段を賞賛すべきである。

 

開始早々 左 日辻初段の上段前蹴が決まる          副審もすぐに技有を宣する

 

全力で反撃する左二戸(兄)三段 にカウンターの上段突を決める日辻初段。 手前二戸(兄)三段の上段回蹴。

 

主審は副審二人を呼んで二戸(兄)三段の上段回蹴が有効かどうかの協議。

 

こうして日辻初段は初めて無差別級の決勝戦へと進んだのであった。

 

 

続く

 

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