第5回現空研空手道大会感想 無差別級準決勝 その二

2012/05/13


平成24年5月5日第5回現空研空手道大会が開催された。

無差別級は例年同様とても厳しい内容であったが過去に例のない結果を残した。

 

無差別級トーナメントは大きく4ブロックに分けられ、前回優勝の二戸(兄)三段と前々回優勝の内田初段を両端に据え、途中この二人の対戦が無いように配された。

また各ブロックに二段以上が二名均等に配され、過去の実績と現在の調子から優勝に絡む可能性の大きい者四名が4つのブロックにそれぞれ分散された。

 

その四名はAブロックに二戸(兄)三段、Bブロックに加藤三段、Cブロックに園田(剛)二段、Dブロックに内田初段というものである。

内田初段だけ二段以上ではないが、彼は今年二段昇段の推薦う受けており、夏の合宿で15人組手が予定されているし、無差別級優勝の実績があるのでここに配された。

 

もう一つの準決勝戦は園田(剛)二段と第三回現空研大会の無差別級優勝者の内田初段で争われることになった。

この二人の体重は園田(剛)二段が67kgに対し、内田初段は107kgで体重差が40kgある。

 

内田初段は本年度二段昇段審査の推薦を受けた8名の中の一人であるが、在籍期間が約4年半と最も短い。
しかし過去の大会実績や稽古の内容その他総合的な判断で今回二段の推薦を受け、今期の夏合宿で15人組手に挑むことが既に予定されている。

 

稽古への取り組みはまじめであり、基礎体力の増進への意欲も強く、筋トレも長期のスタンスで取り組んでいる。

パワーに関しては我孫子道場の元アイスホッケー選手のアビ二段と双璧をなす存在である。

その組手スタイルはパワーだけに頼るものではなく、上段突きのスピードは軽量級選手にも劣らない。

 

一方園田(剛)二段は、反射神経の良さと自在な足技、そして物心ついた頃から道場で大人相手の組手を積み重ねているので自分より大きな相手と対戦することは日常的なものであり慣れているというよりそれが普通の状態である。

 

この二人の対戦は今回の現空研大会の全試合で最も密度の高いものであり、両者に最優秀組手賞が与えられることになった。

組手の内容はこの賞に値するすばらしいものではあったが、まだまだ発展途上の二人にとっては反省点も多いものである。

 

結果として両者ポイント差のないまま延長戦にもつれ込み、ここでも決定的な差はつかず旗判定となるのであるが、ここでも旗が彫れ、最終的には審判協議のあと主審判定で園田(剛)二段の勝利となったのである。

もしこれが決勝戦であれば、私が審判長判断で再々延長を命じたかもしれない。

 

それほど内容は拮抗しており、どちらが勝利してもおかしくない内容であった。

それではその緊迫した内容は振り返ってみよう。

 

開始早々先手を打ったのは園田(剛)二段だった。

いきなり上段からの踵落の大技に出た。

 

これは狙いは良かったが身長の高い内田初段に対しては一歩踏み込みが浅く、有効にはならない。

踏み込みが足りない点は内田初段も同じで一見押しているようには見えるが肝心のところでは踏み込めていない。

 

それは園田(剛)二段がカウンター攻撃が上手だという事が一つの足かせになっているからだ。

相手に攻めさせて上段回蹴で決めるというのは園田(剛)二段の常套手段であり、そのシーンを何度も見ている内田初段はうかつに距離を縮めることが出来なかった。

一方園田(剛)二段も内田初段の上段突のスピードは何度も対戦して知っているのでこれまた簡単に飛び込むことができない。

 

しかし、お互い顔面を打たれる事を恐れない二人は接近した時は相打ち覚悟の突き合いを演じた。

この接近戦での正確性はやや園田(剛)二段が勝っており、全体を押し気味に展開する内田初段の攻勢を取るか、正拳の正確さを取るかが最終的な判断のかぎとなった。

 

開始早々園田(剛)二段(右)の踵落としの攻め         左 園田(剛)二段の飛び込での横蹴

 

右 園田(剛)二段の上段突きがカウンター気味に入るが有効は取れず。 その後も下がりながらも横蹴りで上段を狙う

 

右 内田初段の怒涛の攻めで場外に押し出す         左 内田初段の飛び込んでの上段突はうまくかわされる

 

 

右 内田初段の突き(伝統系で言う刻み突き) これはスピードも威力もある。         

 

 

右 内田初段の左上段回蹴                                           左 園田(剛)二段の左上段突

 

上の写真二枚はこの試合での最大の山場となった。

最初の内田初段の上段回蹴は良いタイミングだったがやや浅く、その後すばやく距離を縮められて園田(剛)二段の上段突きをもらう。

 

この一連の攻防で滑川副審の笛が吹かれ、赤(内田初段)の技有のコールがある。

主審は取らず二人の副審を呼んで協議に入る。

 

おそらく滑川副審の位置からは蹴りの細部が見えないので二人の体制や勢いで判定を下したものと思われる。

しかしビデオを見ると微妙で、むしろその後の園田(剛)二段の上段突が入っているようにも見える。

 

しかし生の試合の時はこの攻防の判定は難しく私が副審であってもどちらに判定したかはわからない。

それほど難しい一瞬だった。

 

おそらく飯塚主審はこの微妙な展開で二人の副審を呼び、結果的に双方とも取らない判定を行ったのだろう。

主審、副審共に妥当な判定であったと思う。

 

結果として本戦での決着は着かず、延長戦に突入することになる。

延長戦に入っても両者まったくゆずらず、激しい攻防が続いた。

 

お互の突きがクロスする厳しい展開となり互いに譲らないまま時間切れとなる。

全くポイント差のないまま旗判定となった。

 

左 園田(剛)二段 右 内田初段                 左 園田(剛)二段 右 内田初段 

 

そして副審の旗が割れた。

これは、全体は押して試合を進めた内田初段の攻勢点を取るか、クロスした上段突きの打ち合いでの園田(剛)二段の正確性を取るかの判断だったと思う。

 

主審は副審を呼び寄せ十分な協議を行って園田(剛)二段の勝利を宣告した。

まさに紙一重の判定となったのである。

 

旗判定で赤、白割れる。

 

協議の結果主審判定で園田(剛)二段の勝利が宣告される

 

こうしていよいよ現空研大会はじまって以来初の軽量級同士の決勝戦が実現することになるのである。

 

続く

 

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