ヒット カウンタ

生まれつき体が硬くても空手は可能でしょうか

 

始めまして。突然のメール失礼いたします。

私は38歳で、ほとんど武道経験がないです(1年だけ大学4年の時、不動禅少林寺拳法の道場に通っていました)。

仕事も少々自由な時間が出てきたし、子供もいるので、「強いおやじ」を目指し、武道を始めたいと思い、HPで探しているうちに、「中年空手」と「現空研」さんのHPを見つけました。

「安全面・論理に配慮しつつ、普通の社会人が強くなるための空手」という考えに共感を覚え、HPの内容も共感&勉強になる事ばかりで、入門したいという気持ちが高まり、早速腕立て100回&懸垂50回を始めました。

ただ、不安がありまして、一つ質問をさせてください。

体の柔軟性についてです。

私は体が非常に硬いです。開脚で90度が限度、体前屈で指の先から床まで12センチも間が残ります。股関節は、床に座り足裏をつけて曲げて膝を床につけようとすると、壁に寄りかからないとそのまま後に倒れてしまい、寄りかかっても膝から床までは15センチも間があります。

小さな時から体が硬かったです。ウインドサーフィンをずっと続けていることもあり、ストレッチを随分前(大学)から行っているのですが、硬いままです。大学の体育会の時も、トレーナーからあきれられる程でした。

しかも、どうやら生まれつき体が硬いようです。先日母親から、赤ん坊の時から股関節及び周辺が硬くて病院に通っていたという驚愕の話を聞きました。

もちろん日常生活や普通のスポーツには今までなんの支障もありません。

ただ、現空研さんのHPを拝見していますと、上段への蹴りが出来ないと、かなり辛い(組手の際、将来的に上達していくために)ような気がします。

コラムを拝見させて頂いてますと、「近距離でパンチを出し合いつつ、上段への回し蹴りで決めていく」場合が結構あり、やり始めてもずーっと上段に蹴りが上がらない場合、限界がありそうな気がしてしまいました。

私のように体が訓練によっても硬いのが変わらない可能性が高い場合、現空研さんの空手(他の空手も・・・すみません、空手の流派の違いが何もわからないので)を習い、上達し、強くなっていくのは、無理でしょうか?

上段の蹴り等を多用しない、他の武道の方が良いのでしょうか?
(合気道や柔道でしょうか・・・)
 
メール、大変長くなりまして、申し訳ありません。自分の気持ちを上手く伝えようと思ったのですが、逆に、長くなってしまいました。
ご容赦くださいませ。

もし、お時間等ありまして、お答えいただけましたら幸いです。
今後も、皆様のますますのご発展をお祈りします。

ご質問のポイントは二つあると思います。

一つは先天的に硬い体を柔軟にする方法があるか。
もう一つは万一硬い体でも空手が可能か。

ということですね。

確かに体の柔軟性に関しては生まれつきのものがあることはしかたのないことでしょう。
現在、多くの子供達にも空手を教えていますが、大して苦労せずに180度の開脚で胸をぺったりと床につけてしまう子もいれば、それこそ90度も開かない子もいます。

子供は皆柔軟性があるなんてまったく間違いで、子供でもこんなに硬い子がいるのかとびっくりすることもめずらしくありません。

しかし、訓練によってどんなに硬い子でも6ヶ月すると見違えるように柔軟性がでてきます。
現空研の訓練は、他のスポーツのクラブと比べてそんなにスパルタ式に鍛えるわけではありませんが、それでも笑ってできるという程度ではありません。

体の硬い子は何回かは涙をこぼすこともあります。
もちろんがまん強い子は一度も弱音を吐くことはありません。

私は子供は空手に限らずあらゆるお稽古事はある程度の厳しさをもって臨むことが大きな目で見てその子の宝になるという信念も持っていますから訓練に関しては一切の妥協はありません。

一方大人に関しては、強制は一切しません。
大人に関しては、モチベーションの維持が何より大切だからです。
(大人と子供ではそもそも空手道場に来る目的意識がまるで違います)

そしてモチベーションを持っている人(大人)は自主的にも努力をします。
むしろ努力をしすぎる人にはオーバートレーニングにならないように、「軟らかな決心」を薦めるくらいです。

柔軟性に関しても、それが必要だという強い動機付けさえ維持できれば、私はどんな人でもかなりのレベルまで達成できるのではないかと思っています。
ただ最低でも数年は続けるといった決心は必要だと思います。(大人はこの継続が苦手です)

ただ質問者の方は、子供の頃病院にも通っていたというお話ですから、医学的な何らかの障害があるのかもしれません。
ここらへんは、私も知識がありませんので、一度整形外科やスポーツ関係の障害の相談できる病院で診ていただいたらどうでしょうか。

特に現時点で病的な問題がなく生まれつき硬めだという程度であれば、長期にわたって粘り強く訓練していけば、最終的にはびっくりするくらい柔らかくなると思います。

次に、もう一つ大事なポイント。
そもそも、空手(現空研空手)にとって柔軟性は必要条件なのか、といった問題です。

結論から先に言えば、必要条件ではありません。

そもそも、空手は武道であり、スポーツや踊りとは異なります。
柔らかい体できれいなハイキックを見せれば確かにそこにはダイナミックな美しさがありますが、こうした美しさは武道の本質ではありません。

武道に不可欠なのは強さなのです。
どんなに動作が美しくても、それが強さに繋がらないものならその価値は殆ど無いに等しいのです。

例えば、昨年末に曙対ボブサップの試合がありました。
あの二人はそれぞれの専門では一流のアスリートではありますが、ことK1というキックボクシングに近いルールにおいては素人も同然です。
少なくとも美しいとはとても言えない。

でも、あの体力であれば、一般人であればひとたまりもありません。
一般人でなくてもあの二人に正面から挑んで勝てる人はほんの一握りでしょう。

実戦における強さとは、強いことそれ自体が大切でありそれ以外の要素は一切必要ありません。
家族を守るお父さんは、格好良く戦っても負けてしまったのでは意味がないのです。

美しさとか格好良さというものは、まず強いという条件(これは必要条件)を満たしたあと、できるならこれもあったほうが良いといった程度のものです。

もちろん、柔軟性があって足が高く上がる事はそれだけ技の幅が広くなることであり強さに繋がってきますが、足が高く上がらなくてもそれをカバーする別の技やスピード、力強さといったものでカバーできるのです。

自分に与えられた身体の遺伝的資質を敵を倒すための能力として最大限伸ばす事が武道の目的の一つでもあります。
体が小さいとかその他生まれつき何らかの格闘に関しての弱点とされるもの持っている人が、その弱点をカバーして生まれつきの強者に勝てるようになるところに武道、格闘技の醍醐味があるのです。

それから、最後に、空手の蹴りで足が上がるということと、又割ができるということはイコールではありません。
それほど目立った柔軟性がなくても軽々と相手の顔を蹴れる人は大勢います。

安心して空手に取り組んでください。


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