ヒット カウンタ

子供の筋力トレーニング


はじめまして、HP拝見させていただきました、大変ユニークで尚かつ勉強になります。
今後も武道だけではなく様々な観点で語られる先生の随筆を心より楽しみにしております。
さて、私には、小学2年になる息子がおりまして、近所の剛柔流の道場に週3回通っております。
通いはじめて2年半たちます。
通い始めたきっかけは、やはり世間に漏れずイジメでありまして、「やられたらやり返す」を親子の合い言葉に現在に至っております。
最近は、近所の子供よりは少々精神的にも喧嘩も強くなりイジメられなくなって親は一安心してるのですが、息子は強くなる(空手が)のが楽しくてしょうがないようです。
そこで一つ質問させて下さい。
息子は強いものへの憧れが強いらしく、空手のビデオや、アクション映画の主人公を見ては、「こんな体になりたいんや!」とかいって、いつも腹筋や、背筋、スクワット、拳立てなどをしているのですが、これが大人顔負けの回数をこなしてしまうのです。
私は武道こそ習った事はないのですが、中学は水泳、高校はラグビーなど体育会系に属し、そこで学んだことが「小さい時から筋力トレーニングをしすぎると、成長を妨げる」と言う定説でしたので、「あんまりやったらあかん」と息子に言うのですが、聞き入れません。
その定説が正か否か私にも解りません。
本人が積極的にこなすので、強制的にやめさせるのもどうかと思っております。
ちなみに息子の師範は「できる範囲でやればいい」と言われます。
しかし時々ですが膝の軽い痛み(多分、片足屈伸によるものではないかと思う)など訴えており心配です。
実際の所、筋力トレーニングは子供にとって良いのでしょうか。
回数は1日おき、腹筋100回、背筋100回、片足屈伸25回づつ、拳立て30回3本程です。また、腹筋はきれいに縦割りしているのですが、腕の筋肉と胸の筋肉が思う様に付かないので本人は、かなりムキになってやっております。

以上、宜しくお願いします。

京都市 ○○○○
現空研の今後のご発展をお祈り申し上げます。


子供の筋力トレーニングに関しては諸説あります。
諸説の前提としてよく引き合いに出されるのが、子供の成長の過程を示す「スキャモンの発育曲線」です。
スキャモンの発育曲線に関しては、インターネットで検索していただけば山のごとくヒットしますのでもしご存知でなければお試し下さい。

結論から言えば、幼児期は神経系のトレーニングを、中学生くらいから循環器系(エアロビクス)のトレーニングを、そして筋力トレーニングは高校生位からはじめるのが良いというのが通説のようです。
私も基本的にはこの考えに賛成で、あまり幼い頃からの本格的な筋力トレーニングは弊害の方が多いのではないかという気がします。(詳しいデータを調べたわけではありません。あくまで感覚的な感想です)

ただ、良く言われる、子供の頃筋力トレーニングを行うと身長が伸びないという説は統計的な裏付けはないそうです。
一番問題なのは、オーバートレーニングによる筋肉や腱、骨などの怪我、障害ではないでしょうか。

特に拳立て30回3セットというのは、一般の大人でも中々辛いトレーニングです。
これを小学校の2年生のお子さんが一日おきにこなすのを習慣としているのは驚きました。

私も多くの実例を見てきましたが、この年齢のお子さんがここまでハードなトレーニングをしかも自主的に行っているケースに接するのは初めてです。
こういう苦痛を伴うトレーニングを継続的に行うことができるということはそれ自体が一つの天性であり素晴らしいことです。
この資質をスポイルすることなしに弊害を取り除くというのが現時点でのベストの選択でしょう。

ただ、一般的にはオーバートレーニングには気を付けてということですが、個々のお子さんに関してはその個体差といいますか、資質の差はかなりあります。
重要なことは個人レベルでの限界をいかに的確に把握するかということです。

器具を使ってのトレーニングはなされていないようなので、最大負荷に関する問題はとりあえず除外しておきましょう。
次に問題になるのは、軽負荷であってもトレーニングの累計時間が過度になって生ずる筋肉や骨格に対しての疲労の蓄積で起こる障害です。

例えば、長距離選手のオーバートレーニングによる疲労骨折のような障害です。
継続的な痛みがあり、それが日数を重ねるにしたがって増し続ける状況は明らかなオーバートレーニングです。
アメリカのリトルリーグでは、9〜12歳では、 

が義務付けられていてオーバートレーニングに警笛をならしているそうです。
やはり、オーバートレーニングによる問題が過去多数起きたためにこうした規則ができたのだと考えられます。

大人の自主的なトレーニングであれば、自分の肉体との会話を心がけていれば自分で自分を管理できますが、これは子供には無理な要求です。
何らかの規則を作ってこれを強制的に守らせるというのが一番現実的な方法だと思います。
ただ、これは大人でも言えますが、熱に浮かされているときは、けっこう頑張っていても、ある期間が過ぎて熱が冷めると急にトレーニングを止めてしまうということはごく普通に見られる現象です。

むしろ、こうした時、ある程度の強制力をもって子供を指導していくというのは親しかできません。
「程良く」を長く続けるということ、これが実は大人にとっても子供にとっても一番難しいことなのです。

しかし、尻を叩いても何もしない子供が大多数な昨今うらやましいような悩みですね。


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