ヒット カウンタ

激闘現空研対日本空手協会フルコン組手 師範対決

平成16年6月26日の現空研フルコンタクト空手と日本空手協会麗澤大学空手道部の合同稽古におけるフルコンタクト組手は、友好的なムードの中、互いの技術の粋を尽くす好試合が展開された。

今回の合同稽古の最大の収穫はこの組手の実現にあったのではなかろうか。
そもそも、伝統系とフルコンという前代未聞の合同稽古において、師範級の者同士の対戦といったものはそうそう実現するものではない。
お互い異なった流派で数十年の研鑚を積んだ者どうしが同じ土俵の上で対峙するのである。

現空研のN師範は職業上詳細を明かすわけには行かないので、ここではロボコップで許していただきたい。
現空研の前身拳誠会の初期からの同じ釜の飯を食ってきた仲間である。
当時は、拳サポやすね当てといった防具もなく、文字通りガチンコの組手で私が素手で鍛えぬいた好漢である。

ロボコップのあだ名は、無限とも思われるそのスタミナに由来する。
彼が20人組手を行った時、最後の試合の後、マウスピースを口から出すや何事もなかったかのように一礼したその姿を見てクラさんがそのあだ名を付けたのだ。

また、スタミナだけでなく技の切れ、スピード破壊力も群を抜いており、多くの若者がこのロボコップを目標にしている。
半年ほど前、小山先生が現空研に来訪され、サムライと組手を行った話をした時、その場にいなかったことを大変残念がっていた。

一方の小山先生は改めて言うまでもなく日本空手協会、全空連での大きな大会で数々のタイトルを取り、また若い頃は極真会館にも在籍した強豪である。
現在は協会の指導員として千葉に空手道場をお持ちで、母校の麗澤大学でも指導をしておられる。
そして現在も指導員だけで甘んじることなく大きな大会に出場されるバリバリの現役でもあるのだ。

多くの経歴を持ち、しかも現役同士の二人の指導員の対決は、ピリピリとした緊迫感ただよう中で始まった。



お互い向き合う二人 左:ロボコップ 右:小山先生

小山先生が出て来られたので、私は躊躇なくロボコップを指名した。
ロボコップも小山先生との組手を楽しみにしていたのではないかと思ったからだ。

ここに、伝統空手とフルコン空手の現役師範同士の対決という前代未聞の場が設定された。
シーンと静まりかえる道場。
双方の道場生たちが固唾を飲んで見守る中、試合は開始された。


典型的な現空研の構えのロボコップ対松濤館流の構えの小山先生 

ロボコップは現空研の左構えで不動の姿勢を保つ。
一方小山先生は協会式の中段の構えで軽くリズミカルにステップを踏む。

双方の得意な間合いが異なるので、間合いを制した方が勝敗を制することになるだろう。
互いに鍛え上げた体でスピードも速く、しかもそのスピードは事前の双方の稽古で十分承知している。

小山先生は軽く前後にステップを踏みながら飛び込む機を伺う。
それに対して殆ど動かないロボコップ、最初から対照的な二人だ。


小山先生の先生の一撃右上段回し蹴り

攻撃の口火を切ったのは小山先生だ。
まず右上段回しを打つがこれは崩しのための技で、次の攻撃のためのステップに過ぎない。


すかさず、右上段の順突が放たれる。
恐らくこれを最初から狙っていたのではあるまいか。
この突きは本当に素早く、周到に組み立てられた連続攻撃であることを感じさせる。
しかも、すごいのはカウンターを予測して左で抑えの行動に入っていることからもその緻密な作戦を感じることができる。

ロボコップは右上段の突きを右内受けでブロックした後顔面を狙った裏拳でカウンターを取る体制に入ったが、小山先生の左手の抑えでそれを断念せざるをえなかった。

しかし、反射神経の速いロボコップをはかさず攻撃の手段を左上段逆突きに切り替えた。


ロボコップ素早いカウンター左上段逆突

ロボコップの素早い左上段突きは見事に小山先生の顔面を捕らえるかに見えた。
しかし、反応の速い小山先生はぎりぎりのタイミングでこれを上段外受(内受)でブロックするのである。


ロボコップ左中段回し蹴で反撃

上段突をブロックされたロボコップはすかさず左中段回し蹴へスイッチして攻撃を途切れさせない。


ロボコップ必殺の中段回し蹴を右外腕受けで防ぐ小山先生

しかしその必殺の中段回し蹴を小山先生はすかさず右外受けでブロックする。
最初の接触は瞬時にこれだけの攻防が行われたのである。

ビデオテープを見られる幸運の合同稽古参加者はこの最初のシーンをスローで再生して、この二人の神業的な攻防を観察し勉強してほしい。

私は審判をしながら、この最初の攻防で小山先生が並々ならぬ対フルコン対策をされていることを感じ取った。
今度お会いしたらぜひその作戦の内容をお伺いしようと思っている。

私の想像に過ぎないが最初の蹴りの攻撃は右の一撃(突き)を相当狙ったものではないかと思っている。
あるいは、右は誘いで次の左の逆突きで極める作戦だったかもしれない。
一撃必殺の協会空手の真髄をここに見る思いがする。

この攻撃が相当練られたものであることは似た攻防が再度繰り返されることからも想像できる。
次の写真も多少変化が違うが構造的に同じ攻め方だ。


小山先生 誘いのための右中段回し蹴り

右の上段回し蹴りからの突きに移る連続技は、洗練されており、極めて効果的ではあるが、ある一点でそれが殺されている。
それは、ロボコップの受けが左手ではなく、右手を使ったものである一点だ。
この受けは現空研独特のもので、回し蹴を反対側の手で内受けする方法だ。
このためロボコップは左手が常に自由になっており、カウンターの左上段突きが間髪を入れずに出せる。


ロボコップの左正拳と小山先生の左正拳が交錯する

小山先生はこのため蹴りから突きへの連絡で計算外のロボコップの左手の攻撃を考慮せずにはいられない状況になり本来楽に出せるはずの決定的な突きが作戦通りには決まらなかったのではないかと思う。

しかし、総合力の高い小山先生はすぐ作戦を切り替えるのである。
蹴り技からの攻撃ではなく、振り打ちなどの上段攻撃で体制を崩そうという作戦である。
(勿論私の想像)


小山先生の振り打ち攻撃


小山先生の振り打ちを右内受でブロックしすかさずそのまま裏拳で顔面攻撃するロボコップ

ロボコップも前蹴りなどで飛び込もうとする小山先生を牽制する。
しかし、研ぎ澄まされた目と技を持つ両者はお互いに隙を見せない。


小山先生のしなった右上段回蹴り
これをロボコップは必ず右腕でブロックする

こうしたヒリヒリするような紙一重の攻防が続くなか、次の攻防が展開された。
これは、一瞬の内に終わるのであるが、両流派の秘技が凝縮されており特に上級者はよく勉強してほしい。

最初のきっかけは小山先生の後蹴である。
この後蹴りもよく練られたもので、そのタイミングは絶妙である。

小山先生は最初ステップを踏むが、これはロボコップに正面からの攻撃と見せかけるためのダミーにすぎない。
そしてロボコップがそれに呼応してにじり寄ってきたタイミングを計り、いきなり上段後蹴の大技に出る。

ロボコップの予想を超えたいきなりの後ろげりが絶妙のタイミングで上段を襲う。
普通なら綺麗に決まるタイミングだ。

連続写真1
絶妙のタイミングでの上段後回し蹴
間一髪外受けでブロックしたロボコップ

しかし反応の速いロボコップか間一髪これをブロック。
すかさず軸足を刈りにいく体制に入った。

連続写真2
そのまま軸足を刈ろうと下段蹴りを放つがたまたまバランスを崩した小山先生の背中に蹴りが当たる。

軸足を刈るつもりの蹴りがたまたまバランスを崩して倒れた小山先生の背中に当たる。

連続写真3
倒れた相手に極めの突きを入れようとするロボコップより一瞬早く小山先生の下からの蹴りが襲う。

倒れた相手に正拳で一本を取る体制に入ったロボコップだが、ここからの動きが小山先生の一筋縄ではいかない所だ。
合同稽古の時、協会側の約束組手で倒れた姿勢からの回し蹴を小山先生の指導のもと見せていただいたのだが、それと全く同じ光景を現実の組手の中で披露されたのである。
ロボコップは突きの体制に入っているのだが、それより一瞬早く小山先生の蹴りがロボコップの中段を捉えているのがわかる。

連続写真4
ロボコップ正拳突きを下ろすも小山先生の防御の蹴りで距離を縮められず不十分。

ロボコップの必殺の突きはこうして空を切ることになったのである。
恐ろしいほどに多くの技が凝縮された攻防であった。

小山先生の凄い所は状況に応じて作戦を適宜変えていくところである。
逆に言えば、それだけ多くの攻撃パターンを持っているということである。

小山先生は、この沢山持っている攻撃パターンをいろいろ試してみたいと考えておられるようだった。
何だか、次々技を出してはその効果を確かめて楽しんでおられるように感じたのは私だけではあるまい。
本当に真から空手が好きなのだ。

色んな理屈は付けても結局は空手が好きだから続けている。
私も同じなのでそういうところはピンとくるのである。
この方は本当に空手を楽しんでおられる。空手が好きで好きでたまらないのだ。


いきなり手刀でたじろぐロボコップ


くみ技に入る両雄


小山先生 溜めの効いた回し蹴り(しなりが凄い)


ロボコップの中段前蹴り


ロボコップの左上段の逆突


突きから前蹴りへの連続技。


小山先生左上段の順突


左上段順突きの相打ち


小山先生の左上段回し蹴



ロボコップ中段の後蹴


ロボコップ左中段の前蹴


小山先生飛び込んでの上段突


小山先生空中で二段蹴りの体制


小山先生後ろ蹴り


小山先生 引っ掛けから崩しに入ったところ

連続写真1

連続写真2
小山先生飛び込んでの左上段順突


小山先生接近してからの上段突


ロボコップ左上段逆突


小山先生左中段回し蹴


ロボコップ左上段逆突


お互いに礼


戦い終わって両雄は握手 回りから怒涛の拍手が

こうして物凄い戦いは終わった。
今回は正式の試合ではないので技有り、一本は取らなかった。

もし取ったとしても、互いの力は拮抗しており、判定は僅かなルールの解釈、審判の判断でどちらに旗が上がっても不思議ではない内容だった。

それより、そんな勝敗を抜きにした、高度な空手の技の攻防がこの短い時間の中に凝縮されており、その現場を生で見ることのできた喜びを合同稽古の参加者は感じているはずだ。

現空研一筋でフルコン空手のみ追及してきたロボコップ師範と日本空手協会の指導員で伝統空手を極めた小山先生の歴史的な組手がここに終了した。
互いの健闘をたたえ合って握手する二人には満足の笑顔があった。

その後、小山先生からお手紙を頂いた。
その一部を紹介させて頂く。


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フルコンタクトと伝統空手の合同稽古という恐らく前代未聞の試みでありましたが、参加者の皆さんにはいい体験となりそして心から楽しんで頂けたと思います。

中略

これからも幾度かの試みを重ねながら中身の充実した合同稽古ができればと思っています。
麗澤の学生もフルコンタクトルールの組手の経験の後、協会ルールの組手において恐さを感じないかのように、前に積極的に出て行く姿がみられました。さっそく効果が現れたような思いです。

後略

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小山孝一


小山先生、麗澤大学の皆様への謝辞

私はもちろん現空研の参加者も麗澤大学の皆さんの温かいおもてなしと充実した稽古には感謝の気持ちで一杯で、青木君をはじめ麗澤大学の学生の皆さんのフルコンにおいてもそのレベルの高さに驚いている次第です。
またこうした企画を進めていただきました小山先生、小山田先生また今回はお会いできなかった顧問の野中先生にも感謝の気持ちで一杯です。
また今回の企画を立てていただいた小日向さんにも御礼申し上げます。

道場の床がピカピカに磨き上げられており、皆様の温かいお気持ちが痛いほど伝わりました。

現空研の会員も伝統空手のすばらしさに触れ、それぞれ見習うべき多くの点を感じたことと思います。
私も多くの新たな発見や勉強をさせていただきました。
こうした点をこれからの現空研空手に生かしていきたいと思っています。

私も小山先生同様これからも、このような企画でさらなる充実した合同稽古ができることを希望いたします。

園田康博


 


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