ヒット カウンタ

現空研対元全日本学生チャンプ フルコン組手 

平成16年11月21日 元全日本大学空手道選手権大会優勝者の市川さんが、師範の榊原先生(五段)、小山先生と出稽古に来られた。
市川さんは、榊原先生の道場で指導員を勤められる傍ら、自分で格闘技のサークルを運営されている。
そこには、極真出身者などフルコン経験者も多く、流派の垣根を取り除いた空手道も追及されている。
大学卒業後は国体参加をはじめ、平成12年には静岡県民スポーツ祭においてボクシングライトミドル級で優勝されるなど、格闘技全般に通じた万能選手である。

市川さんが現空研に出稽古に来られる事を最初に聞いたのは現空研の小日向(協会二段)からの電話である。
しばらくして市川さん本人よりメールを頂いた。
その内容を一部紹介する。

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 現代空手道研究会のHPは、約3年半程前より拝見させていただいております。
先日もいつも通りHPを拝見していたところ、私の師匠であります榊原 昇先生(今回同行いたします)のご友人である小山先輩の記事が掲載されており大変驚きました。
そして「これも何かのご縁だ」と勝手に思い込み、自分自身の稽古もままならない状況でありながら小山先輩にご紹介をお願いした次第です。

 私が現空研さんに大変関心があるのは、HPの冒頭でもありますが、『仕事や家庭を持った普通の人が、限られた時間で効率的にかつ安全に空手の技と精神を獲得することを目的として作られた会です。』という方針と、『生涯空手の追及』をされているところです。
 私自身、競技空手から離れしばらくたちますが、仕事と家庭におわれながら生涯空手はなかなか見えてきていないのが現状です。現空研さんは社会人の方が多数お見えになると聞いておりますので、今回稽古に参加させていただき、何かヒントを得ることができればと思っております。
 また、私自身も最近同好会を実施しております為、練習内容なども参考にさせていただければ幸いです。
 それでは、21日にお伺いさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
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文面からもまじめで、礼儀正しい好青年であることが伺える。
しかし、こういう控えめな人程、実力者であるケースが多いのは長年の経験でピンとくる。

21日は、早々から道場に来られており、お待たせしてしまった。
早速稽古に入ったが、今回は基本は早めに切り上げ、組手を主体に行うことにした。

まず、足を止めた乱撃から始めたが、市川さんは素晴らしい乱撃を見せてくれた。
相手をしたのは細田である。

市川さんは長身なので(180〜190位か?)体格的につりあいのとれる細田を指名した。
細田は茶帯ではあるが、パワーがあり、スピードも最近ついてきたファイター型の熱血漢である。
この乱撃を見て、市川さんはただ者ではないなと思った。

伝統系の選手は遠い間合いからの突きはスピードも威力もあるが、こうした至近距離からの連打の打ち合いは経験不足の傾向が見えるのだが、市川さんはまったく違っていた。

何と、上下のカギ打ち(フック)を連撃でたたみかけたり、スエー、ダッキングも巧みに使い、空手とボクシングを上手に融合させている。

写真を見ればそのテクニックは一目瞭然である。

乱撃(細田 対 市川)


細田の顎打ち(ジャブ)を軽くスウェーをしながら受け流す市川さん。


細田の左カギ打ち(フック)をダッキングでかわす市川さん。


虚を突く右上段突き。細田右内受でかわす。


細田のレバー打ち。

 

次に防具を着けたフルコンの自由組手を行ってもらった。
最初の相手は、最近めきめき実力を付けてきた二戸(兄)だ。

序盤は二戸の重い回し蹴りに戸惑い勝ちの市川さんであったが、鋭い中段の突きで反撃する。
中盤市川さんの絶妙なのタイミングの上段突きが顔面をとらえ技有りをとる。
後半は市川さんの上段突き対二戸の回し蹴といった構図であったが、二戸の顔面の防御の甘さを突かれた格好で終わった。

フルコン組手 (二戸兄 対 市川)


始め!


開始早々市川さんは鋭い中段の逆突きを協会空手のお手本のようなフォームで繰り出す。


二戸の中段を襲うかのように低い弾道で始動する回し蹴。


しかし、途中から一転鋭く上段に繰り出される。
市川さん間一髪でこれを避ける。


上段に見せる蹴りを今度は中段にめり込ませる二戸。
しかし、現空研では効かせなければ技有りにはならない。


接近しての突きあいで右クロスカウンターを出す市川さん。


二戸の左回し蹴から「後の先」を取って踏み込む市川さん。


二戸の回し蹴より一瞬早く左上段突きが顔面に炸裂する。

凄まじい攻防はこうして終わった。
内容の濃い組手であったが、二戸は大いなる課題をもらった。

次に対戦したのは、今回10人組手を達成し、黒帯を取ったばかりの畑だ。
畑は、市川さんと年齢が同じだ。
一時ニュージーランドへ留学して昇級が遅れたが帰国するや精力的に稽古に励み、課題を次々の克服して黒帯を勝ち取った現空研の正統派だ。

フルコン組手(畑 対 市川)


始め


市川さんのスピードのある上段突き。


畑は組んで膝蹴り攻撃。


畑の接近しての脾臓打ち。
この攻撃は現空研独特の攻撃方法で、顔面なしのフルコンでは威力を発揮する。


距離があると鋭い市川さんの突きの洗礼をうけるので、接近しての攻撃を試みる畑。
飛び込んで中段の逆突きを狙う。  

 


しかし接近してもボクシングで鍛えたフックでカウンターを狙う市川さん。
畑は思うように接近戦に持ち込むことがなかなかできない。


上段は相打ち覚悟で飛び込み強引に組技に入った畑。
右足を刈り込んでテイクダウンを狙う。


もつれる両者。
ここで止めの号令がかかる。


この時肩を脱臼した市川さん。


私が脱臼した肩を入れようとしたが、既に自分で入れた後だった。


この状態でも市川さんは続行を希望。
再び強烈な上段逆突きが畑を襲う。


止まらなかった上段突きでダウンする畑。


お互い接近戦で突きの応酬。
市川さんの鋭い突きをダッキングでかわす畑。


そこを強烈な市川さんの膝蹴りが襲う。


体制を立て直しあくまで接近戦に持ち込もうとする畑。


畑中段蹴りを狙うも有効打にはなりえず。


市川さんも膝が先行した、しなりのある回し蹴りで応戦。


畑惜しい回し蹴り。
この時市川さんは中段の回し蹴と判断して下段払いで受けている。
伝統空手の最も一般的な受けだ。
このとき蹴りを一転上段に持っていければノーガードの上段を攻撃できたのである。
欠点の少ない市川さんを攻略できたかもしれない数少ないチャンスの一瞬であった。


果敢に上段を攻撃する畑。


しかし、上段の突きは技術スピードとも勝る市川さん。
絶妙なカウンターでの技あり。


今回の市川さんとの試合は、二戸、畑両君は善戦はしたものの、経験の差、技量の差はハンディを与えたとしても、試合としては完敗であった。
特に、上段の防御の弱点を突かれた点が大きな敗因であった。

しかし、この点はフルコン系の空手全体が持つ、共通の弱点でもある。
現空研はこの上段の攻撃に対しては、それなリの対策や工夫をしているのであるが、伝統系のチャンピオンクラスの突きとなると、やはりまだまだ技術の差を見せつけられてしまう。

今回は我孫子の上級者の参加が少なく、また市川さんも負傷されたので若手の二人しか対戦のチャンスが無かったのが少し残念であったが、こうした素晴らしい組手を目黒道場の多くの会員達は生で見ることができたことは大変な体験であり多くの勉強をさせてもらった事と思う。

稽古の後は恒例の2部となったのであるが、市川さん、榊原先生、小山先生を囲んで、武道談義に花が咲いた。
お三方皆、個性は違うのであるが、飾ったところや、気負ったところがまったくなく、本当に自然体で開放的で楽しい一時が過せた。

たまたま、同じ日に見学に来られていたプロのダンサー別所さんもご一緒でき、稽古の話やストレッチ、音楽と空手の話など話題は尽きなかった。

青木君はじめ麗澤大学の方々もそうであったが市川さん、それに師匠である小山先生や榊原先生など、協会空手の幅広さを再認識させられた一日でもあった。

市川さんからはその後メールを頂いた。
市川さんの現空研に関する感想や武道論、また丁重なご挨拶を頂いたので、市川さんの了解を得てここに掲載させて頂きます。

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 今回の現空研さんでの稽古は、私の空手人生の中で大変意義深い稽古になりました。
それは、現空研さん独自の厳選された稽古メニューと、フルコンタクト系の空手を体験できたこと。
また、園田先生のすばらしい空手理論と道場生の皆様の、空手道に対する真摯な姿勢と熱意に触れることができたことです。

  
 まさにホームページの冒頭に『現代空手道研究会(現空研)は、仕事や家庭を持った普通の人が、限られた時間で効率的にかつ安全に空手の技と精神を獲得することを目的として作られた会です。』とあるとおりで、道場生の皆様は週1回(最大でも3回とお聞きしました。)の稽古でありながら、技術・体力・気力が非常に充実しておられ、組手の際も、「強い」というのが実感です。

 また、立ち方や座り方、伝統的な受け方などにも十分に時間をかけ説明される点は、武道性についても申し分ないと感じました。


 現在空手にはそれぞれ流派会派があり、その試合においてはルールも多種多様です。
例えば「顔面攻撃あり」⇔「なし」、「寸止め」⇔「フルコン」などルールが若干違えば、同じ空手でありながら「競技が違うのではないか」というほどの違いがあり、また試合のために必要な技術や体力、練習方法などすべてにおいて違いがでてきます。

 空手を試合ありきで考えた場合、このルールの違う流派会派をひとつにまとめることは到底無理な話です。
またどちらのルールがより実戦的かという話も、ルールがある以上どちらも実戦的ではありません。

 しかし今回現空研さんでの稽古で改めて感じたことは、ルールに若干の違いこそあれ、目指す空手道に何等変わりは無いということです。
それは「強くなりたい」ということ。
酒宴の席でも園田先生と「空手はやればやるほど自分の弱さが見えてくる。だからまた稽古する。そうするとまた弱さが見えてくる。だからまた稽古する。この繰り返しだ。」というようなお話をさせていただきましたが、強さを追い求める過程にこそ空手道の真髄があるように感じます。
 

 今回稽古に参加させていただいた後の2,3日間は、いろいろな思いが溢れ自分の考えが全くまとまりませんでした。
今もまとまったとは到底いえませんが、「組手は目的ではなく手段である。」という考えに今一度立ち返り、今回の経験を指導や自分自身の空手道に生かしていきたいと思います。 
 

 重ね重ねではありますが、本当にありがとうございました。是非とも、またお伺いさせていただきたいと存じます。
次回は練習不足で参加しないよう、日ごろから稽古しておきます。

 同行した榊原先生からも、園田先生をはじめ道場生の皆様にくれぐれも宜しくお伝えしてほしい旨、承っておりますのでお伝えさせていただきます。


               それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
                                         
市川佳直

 

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