第七回現空研空手道大会 感想

2014/05/10

 

今大会は例年とはまた違った内容になった。

総じて言える事は参加者全員のレベルが上がり、多くの試合が紙一重の差になるという展開が続いた事である。

 

空手に限らずどんな競技でもレベルが上がってくるとわずかな技術や気力の差が勝敗を決めることになる。

これは当事者にとっても緊張を強いられる事ではあるが、それを裁く審判にも大きな負担となってくる。

 

そういう意味では参加選手の全員は勿論だが審判団にもお疲れ様と言いたい。

 

試合の内容に関しては今回は前回無差別級優勝者の剛柔流稜風館の加藤四段、それと剛柔流尚誠館本部の寺島館長をはじめとする精鋭部隊が参加されたこと。

また現空研も壮年部のベテランや軽量級の参加者も多く、興味深い組み合わせが多く見られた事も特筆すべきことだ。

 

個々の試合を見るとよく実力を出し切って自分の空手を実現できた者と平常心を欠いて実力を出せなかった者の差も見られた。

ただ勝負では負けたけれど空手の精神を全うして見事な試合を展開した者もいる。

 

前回の無差別級は上位がパワフルな重量級で占められたが、今年は優勝の園田(剛)二段をはじめ入賞者四人の中の三人がスピードのある軽量級で占められた事が特筆される。

準優勝の内田二段は107kあるが、軽量級にも負けないスピードの持ち主だ。

 

園田(剛)二段は前々回軽量級で無差別級優勝を果たして二回目の栄冠になる。

決勝戦の内田二段とは52kgの体重差があり、フルコンタクトルールでは特筆すべきものである。

 

また今回の大会で目立ったのは剛柔流尚誠館本部の方々だ。

特に中量級で優勝された寺島師範は言うまでもないが準優勝の菊池三段もその気迫がすごかった。

 

初めての出場で細かいルールの差や審判の取り方の差もある中でこれだけの成績を残せるというのは技術はもちろんだがその精神の在り様が最も寄与していると思う。

現空研の上位者も、他道場や他流派との試合でも普段通りの平常心で自分の力を出し切れるかを考えて欲しい。  

 

今回私の目で最も印象の残った選手は壮年部軽量級の優勝者北島二段だ。

いつも軽量級の上位で顔をみせる末松二段との死闘も素晴らしかったが、無差別級では優勝候補で重量級の森川二段、二戸三段を破り、優勝者の園田(剛)二段とも延長戦での僅差判定で敗れるまで全試合内容が素晴らしかった。

 

また、特別試合で菊池三段(剛柔流尚誠館本部)との対戦も両者ともに素晴らしい内容だったがこれも制した。

今大会の最優秀選手として賞を与える事にした。

 

前回無差別級優勝者の加藤四段は病気で体調を崩しまだ十分な回復期間を経ず試合参加を決断された。

参加表明時に途中棄権もありうる旨の条件付の参加で本来の実力は出し切れなかったが試合の中身は濃いものだった。

 

重量級の試合で加藤四段を破ったのは篠崎初段で彼は無差別では中量級準優勝の菊池三段(尚誠館)も破っており、準優勝内田二段とも好試合を演じ殊勲賞を得た。

 

女子部の入山一級は特別試合で我孫子道場のベテラン安藤初段と今大会の最優秀選手賞の北島二段と試合を行い、男子に負けない気迫を見せてくれた。

今年は女子部の発展を願いたい。

 

剛柔流尚誠館本部の水本3級は我孫子道場の野口1級との試合で去年同様素晴らしい気迫で勝利した。

ベテランの末広二段とも好試合を演じ敢闘賞を獲得した。

 

水尾二段は得意の前蹴り、上段突きが目立ったが審判の死角になっていたのか中々ポイントにならず惜しい負け方をした。

森川二段は壮年部重量級で優勝し圧倒的な安定感があり無差別級では北島二段に不覚をとったが着実に実力を上げている。

 

遠藤二段も優勝を狙える実力の持ち主だが今回は僅差で浮上できなかった。

杉山初段はまだまだ空手家としては洗練されてないが圧倒的なスタミナとその旺盛な攻撃精神は実戦では大きな力となるだろう。

 

有力な優勝候補であった二戸三段は今回は僅差の判定負で姿を消した。

微妙な判定での黒星ではあったが本来は技有、一本を取れる相手にこういう微妙な判定試合となる事が平常心をやや失っている事を感じさせる。

 

総じて優勝候補の全員が慎重に成りすぎているのが今回の大会で一番感じられた事だ。

平常心とは慎重に成りすぎる事ではない。

 

もちろん興奮しまくることは平常心の対局であるが、必要以上に閉じこもっている事は平常心とは程遠い。

慎重ということは裏返せば欲の塊だとも言える。

 

模範試合として無差別級優勝者の園田二段と二戸三段の試合は伸び伸びとしたものだった。

優勝が絡まなければこれだけの素晴らしい組手ができるのである。

 

この試合は見事な試合ではあったが、まだ二人とも真の実力を発揮しているものではない。

普段の稽古ではこれよりもっともっと高度で緊迫した試合を見ることができるからである。その時が平常心なのだ。

 

審判団は少ない人数でこれだけの試合の審判をよくやった。

私も審判が続くと足の裏がいたくなり皮がむけた事もある。

 

また全ての技を判断しなければならない緊張感の連続はやがて一瞬の集中力の欠落を生んだりする。

それは主審も副審も同じだ。

 

どんなベテランでも主審は万能ではない。

そのために副審がいる。

 

主審は毅然とした主体性を持ちながら常に副審を信頼しなければならない。

微妙な判定を要求されるときはもっと副審を活用しなければならない。

 

全てを支配するのは主審である。

その自覚と全てを統括する気迫、それを平常心をもって淡々と行なわなければならない。

 

審判能力も空手の技なのだ。

 

今回も大変実りの多い大会となった。

今回結果を残せなかった会員もその原因を追究して次回もチャレンジしてほしい。

 

まだ大会に出場したことのない会員はぜひ次回は参加してほしい。

大会出場者は必ず強くなっている事は過去の大会記録を見れば自明である。

 

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