ヒット カウンタ

スタートの意味が分かった、28の夜

 

Sionaka君は大変ユニークな青年です。
彼は空手の話の前に大変文章が上手で、おもしろい。
それは彼のホームページを見ればよくわかります。
それから肝心の空手ですが、まず彼の空手は洗練されています。
子供の頃からやっていた者特有の無駄のない動きが身についています。
最初に体験入会で来たとき、(まだ学校の先生になる前)一目見て彼のレベルの高さは分かりました。
最初ですからもちろん控えめに組手をやっていましたが、そんな化けの皮私の前では無意味です。
彼はできる、これが第一印象です。
案の定、彼は入門してすぐ頭角をあらわし始めます。
最初に好敵手になったのはNito(弟)君です。
Nito(弟)君は個性は全くちがいますが、やはり天性の勝負勘と抜群のスタミナを持っており、異種格闘技を含めて対外試合負け無しの記録を持っていました。
この二人が組手を始めると皆興味深そうにそれを注視します。
また、今回10人組手を達成した東京組は皆良い組手仲間です。
Sionaka君は昨年の合宿の5人組手でも強豪相手にすばらしい組手を展開し、去年は忘年会で流した様々なシーンのビデオの一部にも取り入れられた程です。
このように順風満帆で現空研の空手を吸収していったSionaka君ですが、肝心な10人組手を控えて、様々なアクシデントが彼を襲います。
そのあたりのいきさつは彼の文章に生き生きと綴られています。
しかし、彼はそれを克服しまさにあの状況にあっては奇跡ともいべき快挙を成し遂げます。
怪我を克服したらまた数段上のレベルまで駆け上るでしょう。
彼は、極限まで鍛えてみたい男の一人です。



平成18年10月5日
Sionaka 初段
教員

東京都 在住


「スタートの意味が分かった、28の夜」(語呂が悪い)



 何にも先立ち、今回昇段の機会を与えて下さった先生に大変感謝しております。
ありがとうございました。

5月の右足甲の剥離骨折。言い訳がましくなるので言っていませんでしたが、右手小指の骨折、両手首捻挫も患っていました。
怪我のオンパレードでした。本来なら先送りが妥当だと思います。

 しかし「やらせてください」という自分の言葉に「やってみなさい」と言ってくださった先生の言葉に本当に感謝しています。
実際、こんな状態でできるなんて思ってもいませんでした。先生が言われるよう、まさに奇跡に近いことだと思っています。

 自分の今の姿を見せたい人が二人います。

一人は親父。

 そもそも、空手と言う武道に巡り合わせてくれたのが、親父でした。
最初はいじめ防止の為に通わせた道場に、いつしか親父の思惑以上にはまっていった自分でした。
あれから十数年。途中ブランクがありますが、空手と向き合ってきました。

 元々器用なタイプじゃないし、気持ちの弱い自分はなかなか強くなれませんでした。稽古からはいつも泣いて帰る。試合で負けて泣く。試合で勝っても泣く。全くセンスのない自分の姿を親父は相当歯痒く思っていたのでしょう、
 「辞めてしまえ」
そんな言葉も投げかけられた事もあります。
愛の鉄拳なのか、感情任せの虐待か、よく殴られてもいました。
不甲斐ない試合の後は、正座させられた上、延々説教を喰らう。そんな日々でした。
実際、若気の至りで空手を辞めてしまったこともあります。

 でも何故だか再び続けてこられたのは、空手と言う素晴らしい武道に巡り合わせてくれた親心を、子どもながらに感じ取っていたからかもしれません。
いつまでも親父の中では弱いままの息子でいると思います。
そんな親父に、ありがとうの意味も込めて今の姿を見せたいと思っています。

もう一人は、自分のババアです。

 ばあちゃん子の自分は、昔からおばあちゃんが大好きでした。
年に数回会うばあちゃんとの日々は、何事にも代えがたい貴重なものでした。

 そんなばあちゃんの記憶がなくなり始めたのは数年前。
はじめは「疲れとんかな?」と思うくらいの症状でした。
それが日を追う毎に、目に見えてひどくなっていきました。
いつしか自分の存在すら、ばあちゃんの中では生きられない日がくるのか、そんな想いもよぎります。

 ばあちゃんはよくこんな事を聞いてきます。
「あんたまだ空手習っとん?」
うん、という自分の返事を聞くか聞かないかの内に
「辞めんさいあんな野蛮なスポーツ」と老婆心を覗かせてくれながらも、自分が小学校の頃、中国地方の大会で3位になったのを昨日の事のように話します。
あの横顔を誰が、記憶をなくしている老人の姿と見紛うでしょうか。
自分はそこに、紛れもない『生』を感じました。
「もいっかいばあちゃんに俺の闘う姿を見せたい」
いつしかそう思うようになりました。
 
 今回の昇段で見えてきたもの。
それはまだまだ弱い自分です。
半年前から取り組んでいたスタミナづくりのランニングは、怪我をした5月からストップ。
出来ることはやっていこうと、週末はジムでのトレーニングと平日は腕立て、腹筋、背筋、スクワットを毎日100回やりました。
しかし、やはり準備不足だったかもしれません。 

 正直、自分の空手に自惚れていた時期もあります。
動きたいように動け、倒したいように倒せる。
迷いのない空手をしてた自分。
そんな自分に喝を入れるが如く現れた「迷い」の日々。
勝てない。動けない。弱い弱い自分を再確認しました。
追い討ちをかけるように右足甲の剥離骨折。右手小指の骨折。両手首捻挫。
怪我の数々は、「お前はまだまだそんな珠じゃない」と誰かがそうしているかの様な底辺の日々でした。
 でも、だからこそ今しかないと思ったのも事実です。
だからこそ、気持ちが大切になったんだと思います。
やってやる。こんな状況だからこそやってやる。
そう思って挑みました。そして発見した、やっぱり弱い自分。
でも、この機会がないと弱い自分を再発見する事はできませんでした。
これは、これからの稽古を考えると非常に意味のある発見です。
 
 いつかの目標が達成できたのかどうかは、今のトコ全くわかりません。
自分が少しでも強くなったのか。それさえもよく分からないのです。
でも、一つの山を乗り越えられたのは事実です。
多くの課題と小さな達成感。でもこの小さな達成感があるからこそ、これからも課題に向かって挑んでいけるんだなと思っています。

 この経験を糧に、次なる目標に挑んでいきたいと思います。
親父にもばあちゃんにもまだ見せてない姿。
表彰台の一番上に立つ姿です。
まだまだ、これからが本当の修行です。
先生はじめ、先輩方、道場生のみなさん。これからも宜しくお願いいたします。

押忍




追伸:

自分は格闘技の基本は「やられたらやり返す」だと思っています。
鼻を折って下さった方、足を壊して下さった方、口を切って下さった方。
必ずやり返しますから
☆どこかの骨を折り返しますし、どこかを壊し返しますから
☆早くまた一緒に稽古しましょうね
☆☆今は、それがモチベーションです。


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