株式投資必勝方程式 論理学の話その3
東京造形大学 コンピュータ技術論 第8回講義
2009/06/04
今日のビデオの撮影は彼女に依頼 ↑
今日は情報理論を駆使して株で儲ける話をした。
私は1989年にデジタル版徒然草という本を出版した。
これは、当時コンピュータ専門誌に毎月コラムを連載していたものをまとめて単行本にしたものである。
私は大学ではファジー集合論が専門であり、卒業研究はファジーエントロピーの構築であった。
これは、確率統計論とリーマン積分によって定義されていた従来の情報エントロピーをファジー集合論とファジー積分で定義してみるという試みである。
当時ファジー集合は工学分野では最も陽の当たらない筆頭に数えられるもので、東京工業大学の菅野教授と私の恩師東京理科大学の田崎教授くらいしか目だった論文は見当たらなかった。
その後、どういう風のふきまわしか、ファジー理論の大流行が起き、「ファジー」という言葉は「あいまい」という意味で一般人の口にもあがるようになるのであるが、私が研究している頃は、「ファジー」と言うと「何それ?」といった顔をされたものである。
ファジー集合に関してはデジタル版徒然草の出版後に雑誌に執筆したものをアップしてあるので参考にしてもらいたい。
今回話題にしたのは、この単行本で紹介した私の作った株式投資の必勝プログラムについてである。
雑誌に発表した時点で、株式の予測をし、それが後日見事に的中した記事がある。
こんなもの、一回くらい当たっても偶然ということもあるし私はこれをしばらく分析しプログラムの有効性を検証してみた。
たしかに有効であることは確認した。
しかし、実際にこのプログラムで投資をしたわけではない。(しようとしたができなかった。理由は本には書いてあるが長くなるので割愛)
結果として統計をとって理論を分析しただけで終わった。
数年前、大学でこの記事が話題になり、ぜひそのプログラムを拝借させていただけないかという話があった。
私は自分で試してもいないものを無責任に公開するわけにもいかずその話は消えた。
しかし、最近になってリーマンショックと言われる株の暴落とそれに起因した日本経済の低迷ぶりであらためてそのプログラムを検証してみる気持ちになった。
20年も前のプログラムを現在の株式相場に適用してみるとどうなるのだろうという興味もあった。
ただ、当時のプログラムは現在とはまったく違ったコンピュータ環境で実験していたものでそのままでは動かすのが大変だ。
それで、現在の環境に適応させたプログラムを簡単に作り変え、現在入手できるデータで実験してみた。
2000年の年明けに200万円の元手で私のプログラムに従って機械的に売買を繰り返すと果たして儲けがでるのか。
結果は驚くべきものだった。
最初のランでオーバーフローしてしまった。
これはどこかプログラムのミスがあるに違いない、ということで調べてみたがこれといった致命的なミスは見つからない。
それで、簡単にするために省略していた取引手数料や極端に株数の少ない銘柄は最初から除いてプログラムを走らせてみた。
やっとオーバーフローしない設定にしてみたところ100億円の儲けという結果がでた。
にわかには信じられない数字だ。
これは明らかにおかしいはということで、いろいろ条件をきつくしていってみても、どうしても億の単位の儲けになってしまう。
現在再度検証している最中である。
株を数学的、科学的捉えて儲けようという試みは昔からある。
チャートとよばれるグラフをもとに数学的な解析で儲けようとする試みをテクニカル方式という。
一方会社の財務的な分析や経済の総合的な解析で儲けようとする試みをファンダメンタル方式という。
株式制度の本来の意義からするとファンダメンタル方式が正統派だ。
しかし、理科系の人はこのチャート分析に興味を示す。私もそうだ。
現在、このチャート分析の実効性は科学的にはほぼ否定されている。
その根本になる考えは効率的市場理論と株価のランダムウォーク理論による。
一言で言えば、現在(一瞬の過去)の株価は全ての得られる情報がほぼ瞬時に反映され、その一瞬でも先の株価は酔っ払いの歩みのごとく予測不可能であるという理論だ。
私もこれは正しいと思う。
多くの株価予想プログラムは過去の「錬金術」の研究のごとく科学者の無駄な夢に終わるはずである。
しかし、ここに私のプログラムはこの公理にも等しい大原則からはずれる結果を目の前に出している。
実際のデータでシミュレートしても明確な有意差を現出しているのが恐ろしい。
私はネットで私の考えに近い理論でこうした株の取引をしている例が無いかを調べてみた。
世の中には古典的なテクニックが山ほどあり、それらは既にプログラム化されたり、実際のデータで検証されているものが多い。
しかし私のプログラムと似たものは見当たらなかった。
考え方自体はそれほどトッピなものではないのだが、ファジー的な見地で考える人が少ないということなのかもしれない。
まだまだ詳しく検証してみないと本当に私の理論が有効なのかどうかはわからない。
もし仮に、この理論の有効性が確認できとしても、これを発表して全ての投資家がこの方法を使えば、この理論は崩壊してしまう。
逆に言うと、この理論がもし有効であるなら、市場はまだ十分には効率的ではないという証明になる。
一つでも例外が存在すればそれは理論として破綻しているわけだから。